SPグループの気ままに観察日記
SP部門のみんなが見た色んな物、その感想をUPします。展覧会あり、自然あり、遊びあり、建物あり、街で見た変な物あり。一見「何これ?」と思ってもそう言う物こそが後で役に立つのです!

« Main

12.和菓子とアート 2006年11月17日 10:52

 意外な組み合わせであるが、納得できるコラボレーションでもあった。
 室町時代から続く和菓子の老舗、虎屋が主催する展覧会「和菓子アート」展が開催された。

 和菓子の魅力は、美味しさだけではなく、色やかたちの美しさ、季節を凝縮して五感を刺激する芸術性にある。その意味で、古くから暮らしに彩りを与えてきたアートともいえる。
 展覧会には特別出品のアーティストを含め5名の作品が展示され、アートを通じて和菓子の魅力を伝えている。

HP+ART12-1.JPG

HP+ART12-2.JPG

 圧巻は永田哲也の作品。
 会場奥の幅4mほどのスペースに、落雁や金花糖などの干菓子作りに欠かせない木型から型取った和紙の作品「和菓紙」が、モチーフごとに構成されインスタレーションされた。
 かつては大ぶりの木型を使ったお祝いの菓子が盛んに作られたが、永田は「鯛」や「松竹梅」「宝船」「四季折々の花」など日本の伝統意匠を、アートというかたちで蘇らせる。
 永田自身も木型を数多く所蔵しているが、さらに本展では、古い木型を所蔵する和菓子店に協力を求め制作した。地域、製作年代も異なる木型からは、木型を彫った職人それぞれの技や思いが感じられる。

HP+ART12-3.JPG  HP+ART12-4.JPG

HP+ART12-5.JPG  HP+ART12-6.JPG

 その他、様々な種類の木で一つひとつ丹念に作り上げあげられた、さわって遊ぶことのできる青柳豊和のユニークな和菓子オブジェ。実際の和菓子づくりの作業を詳しく知る、福留千夏の樹脂粘土でできた5mmほどのミニチュア和菓子。
 さらに亀井紀彦の微妙な色が浮かぶ透明なオブジェが、亀井と虎屋職人とのコラボレーションによって創作された和菓子と対比され、会場は、和菓子の楽しさ、おもしろさ、また美しさを感じとるコミュニケーションの場となっている。

 歴史や伝統に触発され、アート活動を行うアーティストは意外と多い。
 今回の展覧会は、そのようなアーティストの視点や姿勢をすくいあげながら、その原点である現場に引き戻したかたちの企画展であり、和菓子を愛するキュレーターの技が感じられるものでもあった。 【池村明生/取締役】

HP+ART12-7.JPG
和菓子アート展/11月1日~30日/虎屋ギャラリー(東京都港区赤坂4-9-22)

11.画家が書くエッセイ 2006年11月02日 10:33

 ときどき、“絵描き”が“物書き”に変わることがある。

 画家は物に対する見方がおもしろく、とっつきやすい文章で表現されると、絵をみる以上に、納得させられることもある。
 小難しい言葉が並ぶ美術評論のような内容は、余計に難解な世界に入ってしまうが、日常的な事例を挙げながら自然な語り口で流れるエッセイは、意外と楽しい。

 朝日新聞社から12冊の新書シリーズが創刊された。
 その中の1冊に、日本画家千住博の「ルノワールは無邪気に微笑む 芸術的発想のすすめ」がある。
 一般の人の素朴な質問に対して、世界を駆け巡るアーティストである千住が明快に答えていくという、読みやすい編集企画。たぶんこの企画自体、千住自らが企てたのではないかと想像した。

HP+ART11-1.jpg
朝日新書007 「ルノワールは無邪気に微笑む  芸術的発想のすすめ」 千住博著
740円(本体価格)/ 777円(税込価格)  2006年10月13日発売  新書判並製■256ページ

 たとえば「受験に対してどう思うか?」。また「インテリアコーディネイトのポイントは?」「落ち込んだときの対処方法は?」「芸術家にとっての経済とは?」など、普通の暮らしをしている人でも興味がもてる疑問に、次から次へとアーティストのフィルターが重なっていく。

 本の中で千住も書いているが、芸術活動は絵を描く時ばかりではなく、食事していても、風呂に入っていても、リビングでくつろいでいても芸術活動が連続しているという。
 千住にとって、絵筆も持たずにエッセイを書くことも、コミュニケーションを図るための大切な芸術行為なのである。

 ニューヨークに生活の場を構え、世界を見据えて挑んでいる千住の素顔が見えたようで、すべて読み終え元気をもらったような気がした。
 次は、久しぶりに野見山暁治の「四百字のデッサン」でも読み返したいと思った。【池村明生/取締役】