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朝夕のラッシュの中を人々が動きまわっている。 東急東横線「横浜駅」のラッチ階コンコースに掲出された大型ポスターが、「私を見て!」と人々を刺激する。
横浜美術館で開催中の展覧会「アイドル!」の告知ポスター。 縦2m×横5m以上の大型ポスターに登場するのは、アイドルまがいの2人の女性。 一人は「サトエリ」、もう一人は「クサマ」である。 それぞれは展覧会「アイドル!」の出品作であり、「サトエリ」は女流カメラマンとして広告界で活躍する蜷川実花の作品。「クサマ」は言わずと知れた現代美術界の大御所、草間彌生のポートレートである。
最近は、どの美術館も展覧会企画については工夫している。 社会との遊離を避けるべく、扱うジャンルも、映画やアニメ、漫画といったものが多くなり、いわゆる美術に興味のない人々の動員も図る企画が目白押しである。 アートというジャンルは、今や評論家でも把握できない幅の広い存在なのである。
公共空間という礼儀正しい場において、「アイドル!」の大型ポスターは“妙な雰囲気”を漂わしている。 隣の壁に設置される同じ大きさの陶壁レリーフや商品広告と比べて「アイドル!」は、じつに新鮮で、告知物の機能を十二分に発揮している。 「アート」というお墨付きがついたゆえに許される広告と捉えれば、美術館広告は、もっともっと街を楽しくさせてくれるかも知れない。【池村明生/取締役】
昨今、コンピュータや電話と同様に、バスやトラックといったモビリティツールも、小型で手軽といったパーソナル化が進んでいるようである。
この10月、茨城県の南端に位置する取手市に、市内全域を運行する小型のコミュニティバスが新しくお目見えした。 運行ルートは、既存ルート1本を含めて全7本。 市内のほぼ中央にあたる取手駅を中心に、小分けされた7つのエリアを運行するコミュニティバスが、高齢者や子どもたちの足がわりにフットワークよく動いている。
コミュニティバスは、取手市の肝いりプロジェクトであった。 市は車両デザインを、市内に立地する東京藝術大学の先端芸術表現学科助教授で、ユニークで個性的なアート活動を展開する日比野克彦に依頼し、コミュニティバスは型破りなデザインとなって登場した。
デザインは新規運行する6本のルートバスを対象に計画され、運行ルートごとエリアの特徴を表わす「言葉」と「色」でアート化された。 「言葉」は、事前に地元住民からヒアリングしたエリアゆかりのキーワードであり、様々な言葉がグラフィカルなデザインで、バスの外観を包み込んでいる。 また「色」は、6本の運行ルートの違いが一瞬で認識でき、かつ子どもたちにも「○○色のバス」と理解できるように、それぞれのエリアの印象に合わせた6色を基本色としている。
デザインが斬新であることが、アートではない。 日比野がデザインしたバスは、運行から1週間ほどで、すでに地域に溶け込んでいた。
それはまず、停留場でバスを待つ時からはじまり、“いつバスがやってくるか”と、バスが来ることが単純に待ち遠しい。またバスが停留場に近づいてくると、“やっと乗れる”と、なぜかワクワクする。 そして田園風景に囲まれた細い道を通るたびに車窓からは、家の前を通り抜けるバスに向けられた住民たちの笑顔が垣間見られ、コミュニティバスの本当の意味を教えてくれる。
取手市コミュニティバスは、バスを待つ人、街の人、それぞれがそれぞれの気持ちを投げかえるパブリック・シンボルとなっていた。