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今回は、東京品川の元東京税関の移転に伴った、「東京入国管理局エントランス壁面アート」計画の制作舞台裏を紹介します。
コンセプトは、「品川ものがたり」
日本の玄関口となる施設の空間的役割を踏まえて「歌川広重 東海道五十三次 品川」の版画と、古代・現代・次代の時間軸をベースに、品川のまちの表情を組み合わせた「広重とのコラボレーション」を試みました。
品川のまちの特性
・東海道最初の宿場まち
・国際交流の窓口となるまち
・平和と文化をはぐくむまち
・活力にあふれた個性あるまち
・緑ゆたかなうるおいのまち
キーワード=デザインモチーフ
「港」 :港の風景(品川埠頭の航空写真)・船の行来・海苔場・洲崎 etc.
「まち」:宿場まち・商店街・人々の表情・駅・近未来都市 etc.
「文化」:祭・生活・教育・職人・子供の遊び etc.
「自然」:空・海・川・大地・花・緑 etc.
エントランスから2階へ上がるエスカレーター壁面に2枚、帰りに通る階段壁面に2枚の計4枚の構成で、広重の版画を解体させ、品川区と品川歴史館から得た情報と写真とを組み合わせ、再構成させた展開としました。
広重とデザイナーの小川さんとの格闘劇は、音楽的な進展を繰り返し、デザイン案は多角的な視点で約10案にも及びましたが、最終的に、やはりわかりやすさが勝った結果となりました。小川さんにとっては苦労が多かったと思いますが、かなりヤリガイのある駆け引きをさせてもらいました。
デザイン決定後、製作上の苦労点としては、ポジと紙焼きの古い写真達をドラムスキャンで読取り、美術陶板の転写技術を駆使してこの大きな壁画を完成させたのですが、制作チェックに四国まで行き、広重の版画の海と空の藍色に近づけるために、何度もエアーブラシで藍色の釉薬を重ねて再現させています。
それにしても、広重の版画は、いくら解体させても美しいということを改めて感じさせられました。古代→現代→次代へと品川のまちの変化は加速するのでしょうが、竣工時にはなかった、タワーマンションが続々と建設され、抜きに出ようと開発が進展する今日この頃のまちを、広重はどうみるのか気になるところです。
今回のプラスエッセンスを別の視点で表現すると、食育に力を入れる一児の親として最近思うことは、素材が良いものはどう調理しても、旨いということ。素材そのものの味を素で楽しんだ上で、違った魅力を引き出すという感覚に似ていると思います。そういう意味では、小川さんは名シェフといえると思います。
<楠本ゆり/ディレクター>

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