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ときどき、“絵描き”が“物書き”に変わることがある。
画家は物に対する見方がおもしろく、とっつきやすい文章で表現されると、絵をみる以上に、納得させられることもある。 小難しい言葉が並ぶ美術評論のような内容は、余計に難解な世界に入ってしまうが、日常的な事例を挙げながら自然な語り口で流れるエッセイは、意外と楽しい。
朝日新聞社から12冊の新書シリーズが創刊された。 その中の1冊に、日本画家千住博の「ルノワールは無邪気に微笑む 芸術的発想のすすめ」がある。 一般の人の素朴な質問に対して、世界を駆け巡るアーティストである千住が明快に答えていくという、読みやすい編集企画。たぶんこの企画自体、千住自らが企てたのではないかと想像した。
朝日新書007 「ルノワールは無邪気に微笑む 芸術的発想のすすめ」 千住博著 740円(本体価格)/ 777円(税込価格) 2006年10月13日発売 新書判並製■256ページ
たとえば「受験に対してどう思うか?」。また「インテリアコーディネイトのポイントは?」「落ち込んだときの対処方法は?」「芸術家にとっての経済とは?」など、普通の暮らしをしている人でも興味がもてる疑問に、次から次へとアーティストのフィルターが重なっていく。
本の中で千住も書いているが、芸術活動は絵を描く時ばかりではなく、食事していても、風呂に入っていても、リビングでくつろいでいても芸術活動が連続しているという。 千住にとって、絵筆も持たずにエッセイを書くことも、コミュニケーションを図るための大切な芸術行為なのである。
ニューヨークに生活の場を構え、世界を見据えて挑んでいる千住の素顔が見えたようで、すべて読み終え元気をもらったような気がした。 次は、久しぶりに野見山暁治の「四百字のデッサン」でも読み返したいと思った。【池村明生/取締役】