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帝国ホテルの照明
今回wakanaさんが「お気に入りの場所」として選んでくれたのは、格式と伝統を誇る帝国ホテルです。撮影できた写真は、エントランスロビー、フロント、新館と本館の間の車寄せ、そして地下のショッピングアーケードです。ホテルの場合、プライバシーの問題もあって撮影が難しく、パブリックなエリアに限られます。
まずステップ1の(主役はだれか?)という点については、wakanaさんの言うとおり、ホテルのロビーでの主役は、パーティ出席や宿泊目的で来館されるお客様です。
来館者を主役とした場合の照明の考え方には2つのポイントがあります。
ひとつは、来館されるお客様の装いを際立たせることがあかりの役目になります。
そしてもうひとつは、トップクラスのホテルとしての風格、威厳、そしてほどよい緊張感を来館者に対して醸し出す、という役目があります。
この2つの観点から、wakanaさんが撮った帝国ホテルの写真を見てみましょう。

まずエントランスロビーは、角型の天井灯(シーリングライト)で基本的な≪あかるさ≫が確保されています。
ロビーには柱が林立しています。視覚的に邪魔になりそうなこの柱に、柱頭部に間接照明を仕込み、柱の存在感を強調すること(≪モデリング≫=柱を柱らしく見せる光の当て方)によって、ホテルのロビーとしての重厚さを演出しています。
またロビーの中央部にはシャンデリアが設えてあって、これが、広いロビーを引き締めるアイキャッチの効果となり、ホテルとしての華やかさを演出しています。
またシャンデリアには来館者の装いの中の靴やバッグの皮の光沢部分や、金属やガラス部分、そして宝石に≪輝き≫を与える効果があります。

フロント方向の写真ですが、付近のあかりと様子が違うと感じたwakanaさんの観察眼は正しくて、フロントの後の壁がウォールウォッシャー(=壁をあたかも水で洗っているような光)による≪景色≫づくりによってホテルとしての風格を演出しています。このウォールウォッシャーは、ラウンジの大壁面にもあって、ラウンジ全体を非日常的な、アーティスティックな雰囲気で包み込んでいます。

エントランスの写真。キャノピー(天蓋)に設えられた豪華な天井灯(シーリングライト)とダウンライトは、出入りする磨き上げられた黒塗りの車や、来館者の装いに充分な≪輝き≫を与えるはずです。
以上、帝国ホテルの照明を総論すると、≪景色≫づくり、≪モデリング≫、≪輝き≫という3つの要素を巧みに使って、トップレベルのホテルに相応しい風格・品格の演出に成功しています。
wakanaさんが心配する≪あかるさ≫不足については、明るさを要求する日本人にギリギリ理解される範囲で、目一杯、暗くしている点でも、充分評価できます。
パブリックな空間は≪景色≫づくりが大切
ホテル、中でもラウンジは、wakanaさんの言うとおり、一種の公共の場です。
公共の場の照明で大切なのは、≪あかるさ≫よりも≪景色≫づくりが大切です。
≪景色≫づくりとは、こんな空間だということを誰にでもわかりやすく示す工夫のことです。
たとえば写真1は、エレベータホールです。≪あかるさ≫という点では、充分明るい空間ですが、写真2と比べると≪景色≫づくりという概念に欠けている照明だとわかります。
写真1

写真2

写真3は、廊下(通路)のシーンです。≪あかるさ≫も充分ありそうですが、光が壁を照らし、通路としての表情が読み取れます。これを≪景色≫づくりといいます。
写真3

写真4は、≪あかるさ≫よりも、≪景色≫づくりに重点を置いたパブリック空間です。壁の素材がいまひとつなので、≪景色≫づくりの効果は薄いですが、パブリック空間の照明の考え方としては、正しいと思います。
写真4

写真5も通路の写真ですが、構造体をアッパーライトで照らし出し、≪あかるさ≫ではなく≪景色≫作りに専念した照明を採用して大成功を収めているパブリック空間です。
写真5

前回のwakanaさんのコメントに≪景色≫づくりという言葉がなかったのは、いまひとつ≪景色≫づくりが判らなかったからなのかもしれません。
そこで次回の宿題は≪景色≫づくり。
wakanaさんが、今回のレッスンで理解した範囲で、なかなか良い≪景色≫づくりだ、と思う写真を、パブリックな空間からできるだけ多く拾い出し、分類するなり、コメントを加えるなりしてみてください。
照明計画の中で、≪景色≫づくりを覚えれば、飛躍的に質の良い照明計画ができるようになります。
<竹内義雄/代表取締役>
次回:宿題提出日 8/8
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