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今回のwakanaさんのレポートは、取材の範囲、撮影点数、そしてマトリックスの大きさも含めて、力作になりました。代表的な写真に対するコメントも、ずいぶん的を射た表現になってきました。
≪景色≫づくりとは?
そこでハードルを一段上げて、≪景色≫というものについて、もう少し踏み込んで考えてみましょう。
≪景色≫とは何か。≪景色≫づくりとは何かということを取材結果をもとに一緒に考えてみましょう。
設計の意図をさぐる

たとえば大さん橋のエントランス。この空間を設計した建築家はどういう環境を創ろうと意図したのでしょうか。
想像するに、たぶん、これから大航海に出発する旅客の気持ちを大切にした厳(おごそ)かな空間を作りたかった。また世界の名客船を一度でも見たいと期待に胸膨らませて見学に来る人たちの気持ちをさらに高揚させる空間を作りたかった、のかもしれません。
そのために大空間(大きな床面積の空間)であることを強調する必要があったのでしょう。空間全体をヴォールト天井で覆うことで、大空間であることを強調しています。しかしヴォールト面が平滑(単調)では、間延びするという懸念があって折板状にして変化(表情)をつけたようです。
空想し過ぎ〜と思えるくらい想像を逞しくして観察した結果が≪景色≫と呼ばれる代物(しろもの)です。
こんなふうに読み込んだ≪景色≫に対して照明がひと仕事することを≪景色≫づくりと呼びます。
このエントランスホールの照明の仕事=≪景色≫づくりは、ヴォールト全体を明るく浮かび上がらせることが第一で、さらに折板の幾何学的形状を強調すること・・・も大切なポイントです。
ここまで≪景色≫というものを考えて写真をじっとみてみると、さてどうでしょう?
100点満点とはとても言えない・・・ということに気づきませんか?
意図通りに仕上がるとは限らない
ヴォールトをしっかり照らし出すには、光源がパワー不足です。これは照明側のミスではなく、もともとヴォールトに深さが足りないため、どんなパワーを持ってしてもしっかり照らし出せなかったようです。
また投光器がカメラの視点にさえも入り込んでおて、舞台裏がさらけ出されているのもヴォールトの深さが足りなかった結果だと思います。
さらに折板状の幾何学模様の表現がぼんやりしているのも、同じ原因だと思われます。
旅客が待ち合わせをする中央部のベンチ上にダウンライトが設置されていますが、これは旅客から暗いというクレームが出るのを恐れて取り付けられた、いかにも日本的合議制デザインの賜物なのでしょう。
照明設計は建築設計を超えることはできない
せっかくWakanaさんが良いと選んだ物件をボロクソに言ってしまいましたが、この空間の設計の意図は、Wakanaさんのコメント通りなのです。
ただ、建築家の洞察力が足りないのか、せっかくのヴォールトに深さが足りず・・・意図に反して空間が大きすぎたようで、天井の懐がそれに対して足りなかったのでしょう。ならば、いくつかのヴォールトに分けるという手も、実際にはあったはずですが・・・照明側がいくら工夫しても意図を具現化するには至らなかったということです。
意図の7割ぐらいは達成されている・・・というところでしょうか。
この足りない3割を埋めていくのが、これからの日本の照明の課題であって、その課題を達成するために、≪景色≫≪輝き≫≪あかるさ≫≪モデリング≫という、ややこしい話をしているわけです。
写真2のみなとみらい駅や、写真3の赤レンガ倉庫は、≪景色≫の意図はWakanaさんの観察通りで、≪景色≫づくりも見事に達成されています。

写真2:みなとみらい駅

写真3:赤レンガ倉庫
写真4の新宿地下街については、床面の映り込みまでを観察したのはお手柄で、Wakanaさんの分析通りです。

写真4:新宿地下街
さて、次回の課題
≪景色≫づくりの話を続けます。
空間の形(大きさ)を明確にするための≪景色≫づくり、空間に表情を与えるための≪景色≫づくり、空間に方向性を与えるための≪景色≫づくり、周りから一線を画するための≪景色≫づくり、などいろんな意図の≪景色≫づくりがあると思います。
ちょっと難しいかもしれませんが、自由な発想で≪景色≫づくりの意図をさがしてみてください。
また、建築設計者と照明設計者とのハーモニーが良いもの、ギクシャクしているもの、など、今回学んだことも 現地調査の中で見つけたら、ピックアップしてみるのも勉強になります。
<竹内義雄/代表取締役>
次回:9月後半予定
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