宮崎一郎/代表取締役
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さて、4回にわけて光を味わうための4つの味覚(モノサシ)≪あかるさ≫、≪景色≫、≪輝き≫、≪モデリング≫の提案をしました。 従来の光のモノサシである照度、輝度、色温度を使った場合とは違った味わい方ができると思います。 光を味わってみましょう 実例をもとにこの4つのモノサシの効果、使い方をみてみます。 そのためにモノサシを≪あかるさ・・・○≫、≪景色・・・×≫、≪輝き・・・☆≫、≪モデリング・・・↓≫のようピクト化しました。 ≪あかるさ≫ =○○○○○ ≪景色≫ =××××× ≪輝き≫ =☆☆☆☆☆ ≪モデリング≫=↓↓↓↓↓ 上の写真は、東京駅からオアゾへ通じる地下道です。 さてこの通路照明、良い照明でしょうか、それとも何か問題のある照明なのでしょうか、考えてみたいと思います。 ビジネス街への通路であるため≪あかるさ≫はさほど重要な要素ではありませんが、通路という単一機能の空間ですから、単調さを打ち消す必要があります。そのためには≪景色≫づくりが大切で、ここでは内照式の広告が≪景色≫の役目を果たしています。通路の基本的≪あかるさ≫を確保するためのダウンライトが、≪景色≫を邪魔しないように、壁から距離を置いて並べられているのが、工夫されているポイントです。 通路照明として採点すれば、 ○≪あかるさ≫=○○○■■ ダウンライトによる部分照明で全体の≪あかるさ≫を確保しているため、ビジネス街へ通じる通路としては、やや陰気な点が気にかかる。 ×≪景色≫=××××■ 通行人が少ないときは、ダウンライトが床面につくり出す明るい2本のラインが通路としての≪景色≫になるとともに、壁面の広告がにぎわい感を演出している。通行人が多くなるとこれらの≪景色≫が消えるのが玉に瑕。 ☆≪輝き≫=☆☆■■■<BR> ≪輝き≫が要求される空間ではありませんが、天井のパネルに光沢があって、そのパネルに広告照明が映り込んでいて、空間の圧迫感を軽減してくれている。 ↓≪モデリング≫=↓■■■■ 通路照明では、≪モデリング≫はかなり重要な要素になるにもかかわらず≪モデリング≫に対する配慮がほとんどありません。 通路照明には≪モデリング≫が大切 通路を歩いていて、向こうから歩いて近づいてくる人の様子や顔が判らないと不安になります。知り合いだったら挨拶をしなくてはならないし、公共空間ですから変な人が向こうから歩いてくる可能性もあります。そのような不安を解消するためにも、対面する人の表情がわかることが通路照明の大切なポイントになります。つまり通路を歩く人の顔の≪モデリング≫がしっかりしていることが通路照明の重要な要素です。 下の写真は、ちょうどダウンライトの真下を歩いている男性を連射した写真です。
ダウンライトの真下に来ると強く照らされ、外れると暗くなります。明るい場所でも、暗い場所でも表情が読み取りにくいという難点があり、また、歩く当人にとっても、歩くたびに光が頭上から当たったり、はずれたりして、不快になるはずで、通路の≪モデリング≫としてはかなり不十分な照明だと言えます。 一般的地下道照明 下の写真は都内の一般的な地下道の照明です。 ○○○■■≪あかるさ≫ (光は十分あっても、明るさ感がない) ×■■■■≪景色≫ (視線を遊ばせる工夫が何もない) ☆☆■■■≪輝き≫ (裸のライン状の蛍光灯が通路を活性化させている) ↓↓↓↓■≪モデリング≫ (通路としての≪モデリング≫は十分みたされている) 丸ビル地下通路照明 東京駅から丸ビルに通じる地下通路です。 ○○○○○≪あかるさ≫ (天井が間接照明になっており、明るさ感、開放感がある) ×××××≪景色≫ 広告などが無いにもかかわらず、間接照明の天井、柱の上端の埋め込み型の照明、光壁などを巧みに配置して、地下の半公共通路としての≪景色≫づくりに腐心している。 ☆☆☆☆☆≪輝き≫ マット(つや消し)な空間を狙った照明計画で、これも≪輝き≫のモノサシで測ります。 ↓↓↓↓↓≪モデリング≫ 光が空間全体に拡散しているため、通路として、人の顔の≪モデリング≫も適切な範囲に収まっています。 竹内 義雄
流れる光、よどむ光
光について、もう少し深く考えてみたいと思ったときには、光を水の流れにたとえてみると判りやすくなります。 ランプから出た光は床、壁に向かって空間を流れます。たとえばダウンライトからの光はシャワーヘッドから出た水の流れ(シャワー)にとてもよく似ていています。 水は一定方向に流れることもあれば、四方八方霧状に漂うこともあります。強い流れであったり、弱い流れであったり、ほとんど流れずに澱んでいたり、さまざまです。光も水と同じように強い方向性のある光もあれば、霧のように漂う光もあります。 後楽園ドームが出来たときの話です。 グランド全体を覆う大きな白いテントが空気圧で押し上げられ、ドーム型になっている球場で、白い膜を透過した自然光がグランド全体を明るい光で包み込んでくれていますから、快適なスポーツ空間です。 ところが竣工前のチェックで問題が浮上しました。内・外野に高く上がったボールが見えにくく捕球しづらいと言うクレームが出ました。 十分明るい空間ですから、ボールが見えにくいはずなどあり得ません。原因がわからず、調査を実施したところ、思わぬ現象が起きていました。 膜を透過した光は四方八方、霧状に拡散して方向性がなくなって澱んでいて、ボールの表面に陰ができない・・・つまりボールが立体的に見えない現象が起きていたのです。ボールが立体的に見えないため、ボールとの距離感がつかみにくくなって、「ボールが捕りづらい」ということになったようです。 そこで、方向性の強い光をボールに当てて適度な陰影ができるように調整して解決することになりましたが、ここに、光のもうひとつの重要な役目が見えてきました。 つまりモノに適度な方向性のある光を当てて、モノをそれらしく、あるいは適正に見せることも光の重要な役目だということがわかりました。それを≪モデリング(光による立体化)≫と呼びます。 ダウンライトの功罪 ダウンライトという照明器具は、コンパクトで、天井のどこにでも配置でき、必要な≪あかるさ≫を手軽に確保できるため、設計者の間で大変重宝されている照明器具です。
人が行き交うホール、ロビー、廊下、人が寛ぐ住宅の居間などにもダウンライトが使われているケースを見かけますが、冒頭で光を水に喩えたように、ダウンライトからの光はまるでシャワーのように天井から床に向かって強く流れています。シャワーヘッドが数メートル間隔で設置されたところを人間が歩く状態を想像してみてください。ダウンライトの下に来るたびに頭から水をかぶせられているのに似ていて、ダウンライトの下に人がくるたびに、人の顔に不自然な強い陰ができます。 真上のダウンライトの人の顔は最悪の≪モデリング≫ですが、人の真上に来ないように、たとえば壁面近くに配置されれば、壁で反射した光が斜め横から人の顔に当たるようになり顔の≪モデリング≫は格段に改善されます。 和のひかり 和室の縁側の写真です。 縁側の正面にある白い壁上部にできた影に注目してください。庭からの光が斜め上向きに射し込んでいる様子がはっきりと判ります。 和室の光は、光を反射する庭や縁側、そして上からの直接光を遮る深い庇によって、下から斜め上に向かって流れている、という特徴があります。 和室の中を注意深く見渡してみると、意外に天井や欄間あたりが明るいということに気づきます。明るいところがさっぱりしていたら部屋全体が味気なく感じられるので、欄間に彫刻を施したり、天井に絵を描いたりするのは、自然な感覚だったと考えることができます。 和室では、人は、横からの、あるいは斜め下から上に向かう光の中で暮らしています。無論、そこで使われる家具や調度品も同じです。女性がする化粧する場合も、着ている着物も、使う器や調度品もすべて、横からの光を受けて美しく見える(≪モデリング≫)ように形や素材、色などが工夫されているはずです。 高質な照明デザインをするには、≪あかるさ≫や≪景色≫への配慮に加えて、中に居る人物や中で使う家具調度の見え方≪モデリング≫に配慮することが、重要なポイントです。 竹内 義雄