宮崎一郎/代表取締役
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明治、大正の頃建てられた西洋建築に入ってみると、1階の天井高が現代建築に比べてずいぶん高いのに気づきます。 天井が高いため開放感があって、厳粛な雰囲気すら感じます。 古い建物はなぜ天井高が高いのか、考えたことありますか?
1階には広いホールや広い会議室、集会室など、広い床面積が必要な部屋が設けられます。この広い部屋を太陽の光だけで隈なく明るくするには、窓の高さを高くしなくてはなりません。 空間の開放感や荘厳さを演出するために天井を高くしたのではなく、広い部屋の奥まで≪あかるさ≫を確保するためには、窓の高さを高くしなければならず、その結果、必然的に天井高が高くなったわけです。 このような西洋建築でも2階、3階はそれほど天井が高くありません。これもやはり≪あかるさ≫確保が理由で、2階や3階には小部屋が多く、窓をさほど高くしなくても部屋の奥まで≪あかるさ≫を確保できるからです。 創世記によれば、この世をお創りなった神様の最初の仕事が「ひかりあれ!」だったそうです。 光が射し込んではじめて地球上に空間が広々と広がります。太陽の光によって空間が広く開けている状態を神様は《昼》と名付け、太陽の光が消えて空間が消滅したのを《夜》と名付けました。 《昼》は太陽の高度が刻々と変化して、それに伴って空間の質(暑くなったり、寒くなったりする)が変化します。空間の質の変化を理解するために《時間》というモノサシが生れたそうで、《空間》と《時間》の産みの親は、光だったわけです。 この《空間》と《時間》は、地球上のあらゆる生き物に平等に与えられ、ほとんどすべての生き物はこの与えられた《空間》と《時間》に従って生きています。 が、人類だけはこの《空間》と《時間》にも手を加えました。 太陽が沈んで闇に包まれ、空間が消え、時間が止まる地上で、火を使うことを覚えた人類は、闇夜に《空間》を創り出し、《時間》を勝手にいじりはじめたのです。 自由な空間と自由な時間…この二つの恩恵によって人類は文明を築き上げ、文化を育むことができました。 地球上の生命を維持するのに水や空気が必要であるように、文明や文化を育むためには、自由な≪あかるさ≫は無くてはならない存在だったと言えます。 崖に横穴を掘り、そこに火を持ち込めば、どんな奥深い洞窟でも、そこを暮らしの場とすることができます。 現代では建築・土木の建設技術が発達し、巨大な地下街やドーム球場が建設されていますが、光の技術がそれに追いついていなかったら、出来上がった施設は闇に包まれたまま、無用の長物になってしまいます。 未開の地を訪れた探検隊が手にしていた懐中電灯を、原住民が見て、太陽のかけらだ…と言ったとか。 たいまつにしろ、懐中電灯にしろ、それらのエネルギーの源は、すべては太陽のエネルギーの蓄積(石油、木材、ガス)の賜物で、それらを人類が知恵を尽くして地球から引っぱり出したものですから、原住民の「太陽のかけら」説は案外正しいわけです。 高層ビルから街の夜景をみれば、まさに宝石を散りばめた見事な光景です。よくよく考えてみれば、これら全ては太陽のかけら。太陽が沈んだ後も、人類は上手に過去の太陽エネルギーを利用し、文明を築き、文化を育んできたことを思い知ることができます。 生き物にとっての水、空気は基本的重要な要素ですが、人類にとっては、光は文明・文化のための水、空気と同じくらい大切なものだと、改めて気付きます。 おいしい水・おいしい空気があるように、基本を押さえたおいしい光があるということを、この光のレシピ100を読み進む中で、感じてもらえたら幸いです。 竹内義雄