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−機能体と共同体の違い−
社会の仕組みはすべて組織で動いています。日本の組織は、官僚機構、企業組織も個人の家庭も社会環境と経済状態に適合して形づくられています。
組織とは、ある目的をもった集団ですが、大別して共同体と機能体の2つがあります。本来、この2つは構造、機能も目的も違っています。
共同体組織とは、家族や地域社会など自然発生的なつながりで生まれ、その構成員の目的は満足を追求します。従って構成員それぞれの目的指向が重要になり、評価は人格です。
一方、機能体組織は、外的な目的を達成することを旨とする組織で、構成員の満足は手段であり、本来の目的は利潤の追求、プロジェクトの完遂であり、組織外の目的を達成することにあります。従って強さが重視され、このタイプが官庁、軍隊や企業であり、評価は能力と実績が尺度です。
近代の合理的精神が発案した組織形態が企業、とりわけ株式会社です。人間を能力で雇用し、その能力を最大限に発揮できる役割分担体制を採って、人柄より能力を重視します。
西欧の考えでは、機能集団の組織にはルールや各人の役割分担をできるだけ明確にして、各人が組織内でこれだけは必ず守るという約束事があります。従って各人が情実や相互扶助といった余地はありません。一方、日本では官庁、学校や企業でも、同調圧力が強く組織内部で情緒的な一体感を重視し、各人が互いに気をきかせ合い補いあっていく秩序が根底にあります。このことは共同体と言える情実やしがらみになり、戦後60年余りを経てもなお続行する官公庁の談合があります。企業内で組織のリーダーも、個人の能力、業績や指導力よりも年功、人望や根回し上手といった情緒的要因が、周囲から推奨されます。
上述の機能集団は、組織に主体性があり、組織内部の役割や責任ばかりではなく、人々の業績評価やリーダーの選抜基準を明確化します。リーダーはその権限の範囲内で存分に組織を動かせます。現にホンダ、キャノンやデンソーといった国際的企業は、時代の変化に順応して自ら構造改革を進め、明確な戦略に基づいて内に対しては絶えず自己変革を、外に向かっては能動的な進行や防御を行い、時代に先手を仕掛け十分な主体性を発揮しています。
前述の自己変革や防御について言及すると、日本人のコミュニケーションは、古くから“ぼかし”にありました。信長時代の宣教師フロイスは、その著書で「欧州では言葉の明瞭を求め、曖昧な言葉を避けるが、日本は曖昧な言葉が優れ、最も重んじられる。」と記しています。このことは日本語の特質ではなくメンタリティに基因しています。つまり自己主張が乏しく自己防御が働いているのではないでしょうか。中国や韓国はユーラシア大陸に位置し、古代から民族が覇を競い衝突を繰り返してきた歴史があります。それには自己主張と自己防御なくしては、環境に適応できません。一方、日本は近代まで異民族との衝突は元寇を除いてなく稀有な歴史でした。
国内の戦争は内乱と言い、すべて領主間の戦いであり、互いにわかり合っているために、自己主張も不要で、それを生みだす自我も不要でした。わが国は同質性が言葉よりも情緒、“以心伝心”のコミュニケーションの土壌になったようです。この一体感という連帯が“和”であり“ぼかし”です。さらに、この外面のぼかしが外面でも心理的作用しています。自分の内面で生じる矛盾を受動的に解消するために欧米人には分かりにくいあいまい化したタテマエとホンネです。一方、西欧人は能動的に解消するためにダブル・スタンダード(二重基準)を適用します。
もう1つ付け加えれば、社会問題化した子どもの教育のあり方は、子どもが個として成長し自立する過程まで、自分にふさわしいと思うあるべき姿や価値観を選び出し、自分の人生や社会で実現する志を立てて行動できるよう教育することにありましょう。その姿や価値観は人それぞれであっても、摩擦や葛藤を恐れずに互いにその利点や優位性を主張したり、コミュニケートすることが大切です。このことは、教育にとどまらず、政治経済や社会のあり方に至るまで競争と共生がバランス上、必須です。
最後に機能体組織は、目的・目標を達成するために、その仕組みや人材配置を最適化しますが、衰退に陥る原因に次の3つがあります。
(1)組織の共同化
これは組織がつくられた目的とは別に組織自体が目的化します。構成員を固定化すれば、その地位向上と権限拡大を目的化し、共同体意識が生まれます。
(2)環境への過剰適応
これは現在の環境に安住し、環境変化に適応できなくなります。ある環境に適応しすぎると改革もできず、外部より内部擁護に注入します。
(3)成功体験への埋没
人は1つのことで成功すると、それを繰り返す習性があります。組織は個人よりも成功体験に溺れ易く、権威と権力を強めます。その弊害は創造性と改革性が失われ、方法論が同じ繰り返しになります。
日本企業は、長く量的拡大と利益の前年比増を追求しましたが、今後はあるべき姿としての理念・理想像として、どんな会社になりたいか、なにをしたいのかといった命題が重要です。その現実に向けて適わしい人材と利益体質を定めます。
企業の命運とは、人を束ねる組織の盛衰にあると言っても過言ではありません。
村井 徹

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