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時事問題(24)知的財産とはなにか 2009年12月10日 09:00

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ー知識社会への理解ー

2002年、政府により“知的財産立国宣言”が決定し、情報社会以前では特許や商標などは工業所有権という言葉で括られ、これに著作権を加えて知的所有権と呼ばれました。しかしこの用語では製品をイメージさせ、ソフトウェアには似合わないために、知的財産権という呼び名に変わりました。また広義の概念としてデザイン、技術やノウハウも知的財産権に加えられた経緯もあります。従って知識社会では知的財産権を侵害することは、モノを盗むのと同じ犯罪という位置づけになりました。

知財の源流を辿れば米国にあります。彼らの祖先は1620年に英国から自由を求めて渡航し、1776年に独立を勝ち取り、1787年に憲法を布告しました。その中に特許や著作権を守ることが明記され、1790年特許法を成立させました。
米国は技術分野で世界の覇権を握ることが真の独立であるとの思いが強く、技術で他国に抜かれることを断じて許さない意気です。私が10年前に聞いたところでは、米国は19・20世紀200年に亘る世界の特許をデータベース化して、諸分野の進捗を国家で管理する体制があります。世界的に見れば、知財は国家間の主題であると共に、国際摩擦、国際紛争の火種になって、知財のあり方が国際競争力を左右する時代です。知財保護の観点から、世界から批判される中国は、技術やコンテンツを重視し知財立国・技術立国を目指していますが、モノ作りの現場意識は未だ低いようです。曽つての工業社会では、モノの生産が中心であり、技術はモノ作りの道具と捉えて、内外から入手した特許料は全体コストの3〜10%でした。しかし今や日本の国内総生産に占める第三次産業・サービスは約70%に達し、ソフトウェア、映画などの製作費に占める初期コストは膨大化しています。著作権による保護を必要とするビジネスを“コンテンツビジネス”と総称し、アニメーション、ゲーム、映画、音楽、文芸や写真などを包含します。日本はハード中心ですが、米国は技術とコンテンツ、そしてビジネスモデルが連携して進展しています。

日本の知的財産権は4つに大別できます。(1)産業財産権としての特許権(発明・アイデア20年間保持)、実用新案権(考案10年間保持)、意匠権(デザイン20年間保持)、商標権(ブランド、マーク10年間、更新可)(2)著作権(3)育成者権 農作物、林産物、など生産栽培される植物の新品種(4)不正競争防止法 著名な未登録商標、商号の紛らわしい使用や不適切な地理的表示の禁止及び後述の営業秘密が含まれます。
日本の知財戦略は、2005年までにインフラ体制の構築として、知財高裁新設、大学の知財部設置などを経て、2006年から産学連携、中小企業と地域振興、模倣品、海賊版拡散防止条例、コンテンツビジネス振興といった動向です。つまり創造性開発としてその産物である知的財産の保護強化、その有効活用を主眼にしています。

私は長年、実務家として法務の立場から、内外の工業所有権、ノウハウや著作権法に携わってきましたので、今後の知財のあり方の課題を4つに括り概説します。
(1)世界レベルの特許制度づくり
特許は世界で最初の発明に与えるという原則があるにも拘らず、その審査を各国がそれぞ れ別個に行っている特許審査主義が現存しています。これは正しく知的貿易の障害です。この考え方は1883年のパリ条約でした。貿易自由化は世界経済の発展をもたらしますが、特許が保護されない国々に特許を輸出できません。しかし科学技術に国境はなく、特許は自由に乗り入れます。EU31カ国はヨーロッパ特許庁(EPO)を組織運営して、2008年5月から国ごとの言語登録を廃止し、英語による特許が可能になりました。近い将来、1つの特許がEU全域で通用す.
る制度の創設が期待できます。
(2)知財の海外流出
日本の知財が、中国、韓国や台湾などアジア諸国に流出しています。日本の早期退職者や定年退職者が、企業の技術やノウハウを携えてアジアに出かけて現地指導をしています。その理由には知財が企業の所有物か個人のそれかが曖昧にしているからです。雇用上、退職後の同業他社への就職を一定期間禁じたり、情報漏洩についての不備さがあります。知財の帰属、雇用契約などにどのように対処するかが問われています。
知財は世界貿易機関(WTO)で議論されているものの、先進国と途上国が対立しています。後者の違法な模倣をくいとめるために、ライセンス供与や直接投資による技術移転や技術革新の加速が解決の糸口になります。
(3)秘密の流出防止
広義の知財である営業秘密についてここで取り上げます。日本では2004年不正競争防止法が改正施行されました。これにより営業秘密の外部持ち出しに刑事罰を科す事になりました。特許が特定された明確な権利であるのに比べて、営業秘密は曖昧な権利です。しかも一度公開されると、その価値がなくなります。しかし秘密を企業で保持できれば、特許の有効期間の20年に対して、営業秘密は未来永劫独占できる権利です。ただしその前提に企業側に秘密を守る社内管理があることが条件です。その対象は特許性のあるものも含め、技術情報、データ、顧客リスト、ビジネスプランや各種関連レポートなどを含みます。営業秘密の究極の管理は、労務管理(倫理を含む)に尽きます。営業秘密を物理的に施錠しても、それにアクセスできれば本当に管理されているとは言えません。
(4)必要な新しい人材育成
技術に疎い法律家だけでは難しく、必要な人材とは文系と理系の境をなくし、視野の広い知財プロの養育です。経営や技術にも通じるマルチ人材、先端技術への理解、国際的な交渉能力といった高度な人材です。正に“知財は人なり”です。

村井 徹