村井徹/監査役 セイコー株式会社を退職後、経営コンサルタントに携わり、現在、当社の監査役等を務める。
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ーものごとの本質を求めてー
一般的に“ものをみる”と言いますが、“みる”には視る、観るや察るがあります。 東洋的な捉え方をすれば、視るにはものの本質を、観るにはものの因果関係を、そして察るには目には見えない気配を感じているという意味があります。従って眼力とは上記の3つのみるに関連づけられた用語と解釈できます。 一方、“ものを考える”とは、ものごとに傾注して新しい視点を確立することです。ここで言う新しい視点とは、現状の問題点を提起して解決策を見出すという意味です。従って外界の刺激に反射的に対応するとか、頭中に漫然と思いめぐらしている段階では、考えている状態ではなさそうです。
私の座右書の中に、講談社版『思想と対話』全12巻があります。1960年代後半、日本最高峰の知性を誇る湯川秀樹他11人による深い思索の原典です。その中に笠信太郎「事実を視る」ーものの見方についてーの冒頭に“イギリス人は歩きながら考える。フランス人もドイツ人も考えた後で走りだす。スペイン人は走ってしまった後で考える。”があり、日本人のものの見方へと展開する論旨は、新鮮で衝撃を覚えた記憶があります。 この名著に因んで、今回のシリーズはものの見方・考え方とし事象的に展開します。
ものの見方はどういう視座から観察するかによって見方が変わります。たとえば太陽という星も見る場所で異なり、赤道直下から温帯までは赤色、温帯から亜寒帯までは黄色、それ以上の緯度では白に見えます。 絵画で印象派といわれるゴッホ、ミレーやコローは光の当たり具合によって同じものが違って見える事を知り、それを表現に取り込み近代絵画の世界をつくりあげました。また有名な例題では、“もうコップに水が半分しかない”と考える人と“まだコップに水が半分もある”と考える人には大きな違いがあります。そのいずれかが良いという訳ではなく、慎重を要する状況では悲観的に考えれば、プラスを生み出すものの、何かに挑戦するときには、楽観的に処する方がメリットを生み出す事が多くあります。その違いがもつ意味と価値を知り、日々実行するかが人生の岐路での選択を正し、より豊かな人生を過ごせるかを決定します。正にこれは頭の使い方そのものです。 次に見方・考え方の代表的なものを紹介します。 1. 見方 (1)理性的な見方と感性的な見方 人は言葉を使って思考展開します。理性とは頭の中で生まれる種々の概念を組み合わせて、言葉により、論理的に新しいものを生み出す能力です。一方、感性は論理化されない、また言語化されない前の認識能力、感じ方、イメージや捉え方をいいます。この両者のどちらかが優れているかは一概には言えません。ある事柄については感性的把握よりも、1つ1つ理性的に体系化していく場合もあり、世の中が混沌としていると理性的では捉えにくくなります。 (2)ホロン的な見方 作家ケストラーが30年前に提唱した見方で、全体を見て個々を判断せよという意味で、ホロス(全体)とオン(個)を合成してホロンと名付けました。いわゆる森を見て木をみよです。組織でも構成員が一体感をもち、個々の能力を生かしながら組織全体の1つの目的に向かう場合にあてはまります。 2. 考え方 (1)3つの思考法ー帰納、演繹、発想法 推論プロセスには3つの思考法があります。帰納法はいくつかの場合(ケース)について、あることが真実であるとき、同じ事が同じ種類の場合、全てについて真実であると推論する、場合(ケース)→結果→規則。 演繹法は1つの規則を1つの場合に適用することにより結果を導く、規則→場合(ケース)→結果。発想法はあるときその状態が別のある一般規則の1つの場合(ケース)であると仮定すれば、説明が可能でありその仮定を採用する、規則→結果→場合(ケース)。 (2)類似・対比的な考え方 ものごとを分類整理して、2つの事象の中に共通点・類似点を見つけていく方法が類似で、その逆に違う点を分類整理していく方法が対比であり、いわゆる二元論です。このポイントは、分類する座標軸の設定にあり、対比を強調しすぎたり、類似点を見逃さないことです。そのために全体像を見て、どこまで対比するかを事前に検討します。 (3)二分割の考え方 われわれは日常的にものごとに白黒つけたり、オールオアナッシングで考えたり、周りの人を味方か敵かに分ける二分割ないしは二項対立の思考を取りがちです。こういうタイプの人はうまくいかないと落ち込みが激しくうつ病になり易く完治しにくいようです。精神科に認知治療があり、ものの見方や考え方を変えたり矯正して、うつが回復したり再発防止に効果があると言われています。 最後に当テーマに関連して、京大の中西輝政教授著『本質を見抜く考え方』2007年サンマーク出版があります。国際政治学者として数多の著作があり、当書は格好の実践的思考法を提言しています。
村井 徹