村井徹/監査役 セイコー株式会社を退職後、経営コンサルタントに携わり、現在、当社の監査役等を務める。
« Main
ーホワイトカラーからゴールドカラーへー
21世紀は知識社会と言われ、ITがもたらした情報化の波は、20世紀の工業社会を確実に変えていく過渡期にあります。従って前世紀に活躍の場があったホワイトカラーの働き方にも、大きな変化が迫っています。 ホワイトカラーとは、業務の裁量性が高く、労働時間と成果の関係が必ずしも比例しない職種です。2007年、ホワイトカラーエグゼンプションの法制化が話題になり、米国と同様にホワイトカラー労働時間規制の適用除外、すなわち労働時間規制を適用除外する制度です。その対象には職種や賃金水準などを考慮するものでした。 また、グローバリゼーションは、モノ・ヒト・カネが国家という垣根を超えて、世界を自由に移動できる状況を指します。企業は安価に製品をつくるために、人件費の安いコストで生産しようとします。このグローバル化は先進国で働く雇用機会を奪い、賃金の安い新興国で働く雇用機会を与えます。今や雇用環境は定型業務のアウトソーシング化と相まって、日本のホワイトカラーの雇用、所得環境を不安化しています。ホワイトカラーという言葉は、明治から大正時代にかけて、1910年頃に意識され、工場の労働者をブルーカラーと呼称しました。通常の事務処理がコンピュータに置き換えられて、正社員は契約社員、派遣社員やパートに取って代わっているのが現状です。
知識社会の中核をなす知識労働者の概念は、1915年に経営学の始祖であった経営学者ドラッカー『新しい社会と新しい経営』に初めて登場しました。その概念は知的な技量などの知識をもつ人をいい、1957年『変貌する産業社会』でマネジメントに携わる人を知識労働者と規定。さらに1985年、米国の経営学者ケリーが情報を知識に換え、知識を利益に換えられる知識労働者をゴールドカラーと提唱しました。今日では知識労働者は、弁護士、医者、研究者など指定分野の専門家や経営者などのマネジメント層や企画・開発・営業に携わるナレツジワーカーを含める総称です。営業に携わる場合でも、経験を積みながら新しい知識を得て、種々な接客ノウハウやナレツジを身につけ、顧客獲得や人脈を広げていく専門性をもつ人です。営業員は商品・サービスではなく、自分を売り込むと言われるように顧客と強い信頼関係を築くために、(1)猛烈さを発揮する狩猟型、(2)じっくりと相手の懐に飛び込む農耕型があります。 今の社会は競争社会です。格差社会、勝者優遇などが連想され、脱力感漂う言葉です。世の中の仕事にはその働き方によってプロかアマしかありません。プロとは何を目指して働くかのこだわりがあり、自立して成長します。自分を律し第三者の目線によって評価されます。 ビジネスが複雑化し、求められるスキルレベルがより高度化し、プロの仕事が増えています。プロは高度な知識と技術によって依頼事項を適える職能です。その基本姿勢には、仕事とは結果がすべてであり、問題解決の指向にあります。またその行動特性は(1)行動的—タフさ、能動など—(2)意欲的—達成感、執着心など—(3)論理的—体系的、選択肢など—です。 20代は幅広い専門能力を蓄積する時期、30、40代はそれらを発揮して活躍する時期です。 組織人は組織という軸で受動的にキャリアを形成しますが、組織にとらわれない仕事人は自身の仕事の軸でキャリアを形成します。両者いずれにしろ、その主体は個々の意志や判断にあり、自発性が必要です。1つの業界や業種で1つの仕事を極めてプロになる能力をもつ人は、仮に他の業界に移っても、仕事のやり方を大きく間違えることは少ないようです。何故ならば、プロの普遍的な能力である性格、人柄、使命感や行動特性が勝れているからです。 前述のように、プロの仕事が高度化するに伴い、仕事の難易度、経験やもたらす経済価値によって収入に差をもたらします。すなわちゴールドカラーの仕事は、生み出す知識価値による収入です。曽つての大学研究者の仕事のように、研究にどんなに多く時間をかけても、学問的に意義がなければ、その価値は意味がありません。一方工場の生産ラインは正規雇用の社員ではなく、派遣、請負いや季節工に置き換えうる時間価値労働です。
最後に工業社会で発展した“管理型マネジャー”は今後“知識型マネジャー”に置き換わり、その望ましいタイプを3つ列挙します。 (1)従来の監督、管理ではなく、育成、支援を重視するタイプ (2)時間管理ではなく、時間効率(優先順位を含めて)を重視するタイプ (3)部下の機能、役割より、能力、個性を重視するタイプ 人は自分を取り巻く状況を先ずは受入れて、次に自分の力で変えられることに勇気をもって挑戦します。行動は必ず結果をもたらし、次の1手も見えてきます。人の行動、成果はすべて自分の信念で決まります。 人は夢や目標などを放棄すれば老い、歳月は肌に皺をつくりますが、情熱を失えば魂に皺をつくります。
村井 徹