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ー職場をおおう人物像ー
戦後の民主主義改革は、職員・工員の身分制撤廃に始まり、その後55年体制下で競争・葛藤を避け、結果の平等を重んじる風潮は企業にも及び、階級・階層もない平等社会をつくってきました。この平等な秩序は企業内の正社員同士であり、年功序列は年齢、学歴、勤続年数を基準とし、長期の雇用関係下で能力や適正を評価し、徐々に差をつけました。
バブル崩壊後、企業は従来の平等や年功序列の伝統を捨て、米国型の能力主義・成果主義をモデルにした組織や人事制度を行いました。すなわち高業績者に共通する行動性向に照らして評価する行動評価(コンピテンシー)、部門や個人の目標達成度を処遇に反映させる目標管理など企業から官公庁、非営利団体まで押し寄せ、結果的には組織や制度の中で選別を強めています。つまり勝ち組と負け組を区別し、あるいは格差を意図的に広げていく意味で選別主義と呼べます。要約すれば、序列主義に基づく雇用・人事は組織内の平等や協調に比重を置くのに対し、選別主義は平等より自由、協調よりも競争を優先します。
バブル以前、多くの企業は右肩上がりの経済成長が続き、この時代は等質性が強みであり、職能資格制度が主流でした。そして情意評価といわれる意欲、努力度、協調性、服務状況などが評価要素でした。しかし成果主義は改めて職務に着目し、この職務はどのような役割、機能を果たすか、どういう成果を期待するかを明確にして、その評価は人中心から職務中心に変わっています。日本の組織風土は集団主義が根強く、他人がどう思うかを過度に気にします。成果主義を成功するためには、経営トップから従業員1人ひとりまで事業目標や部門目標を共有し、具体的な期待を示し、その実現を求めていくことにあります。
権威に盲従することなく、何事につけても自分の考えを持ち、他に影響されず自主的に判断し、それに基づき自分の言葉で発言することを求めます。目の前にある問題を解決することだけでなく、何が課題かを見出す力量が重視されます。
IT化の進行に伴い、頭脳労働に求められるスキルには、ひらめきや勘などを用いて新しいアイデアを生み出したり、既存の知識や技術を応用して具体的な課題を解決する能力です。すなわち洞察力、発想力、推理力、判断力や対人能力など“アナログ的な能力”です。
この成果主義が過半数の企業で期待どおりに機能せず、短期間で撤回もしくは見直しを行っているのは、成果主義そのものよりも、むしろ制度の土台である組織やマネジメントに問題があるケースが多くあります。本来、成果主義は資源の有効配分や動機づけとして有効なだけではなく、自律的な働き方を可能にする制度です。つまり成果に比例する報酬を受け入れる働き方であるからです。日本で見直されている内容は、成果主義の単位を個人から集団に切り替えたり、成果主義の比重を小さくして、プロセスを評価に含めたりする試行錯誤が繰り返されています。このことは市場価値や利益に対する貢献度のような客観的価値から切り離され、組織の論理によって運用される弊害があります。
曽つての日本の組織は、集団主義による帰属意識が強かったわけですが、今や個人主義といえる自己実現の仕事観が勢いを増し、“自分化”という独特な傾向を強めています。自分なりの働き方や生活スタイルにこだわり、気のあった仲間同士の人間関係を大切にするマイペース型個人主義です。そこには組織と仕事は別個として型にはまらず自己愛に徹します。つまり自分の仕事にこだわります。
企業進化論から組織は「仕事をする場」と捉えれば、個人の仕事を支援したり、活動の場を提供する役割も期待されます。このような組織はインフラ型であり、各種の専門能力を備えた人たちが中心になって活動します。その典型が独立事業主として契約した従業員に会社という仕事の場やブランドを貸して仕事をさせます。この組織では仕事の責任、とくに客観的な成果が厳しく問われます。企業は仕事で成果を上げるための場、すなわちインフラ(ブランド、資金、情報、設備など)の充実に力を注入します。上司とは古来、細かく部下を指導したり、仕事だけでなく部下の面倒見のよさがリーダーの鑑とされました。しかし望ましいリーダー像は、組織のフラット化やプロジェクトチーム方式が広がり、また前述の個人主義化が強くなるにつれて、仕事で部下を厳しく管理・指導し、仕事以外で密な人間関係をつくるリーダーよりも、仕事をやり易い環境を整えたり、個人の自立性を尊重したり、必要な助言や調整を重視するインフラ型のリーダーシップが要請されます。
最後に将来展望を記すれば、組織の論理よりも仕事の論理、選別よりも市場や顧客のニーズへの適応を重視する、あるいは組織や制度よりも市場や社会の要求に応えながら仕事をするといった新しい兆しがみられると推測しています。
村井 徹

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