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仕事・忙中閑あり(その14) 2007年08月20日 12:48

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仕事・忙中閑あり(その14)

今回は「人望とは何か」を取り上げます。
広辞苑によれば、“人望”とは多くの人々がその人に寄せる信頼、期待、尊敬の心をいい、“人望のある人”と表現します。私の考えでは、人望の上位概念に“信望”があり、信用と人望が備わっていることをいい,“信望の厚い人”と表現します。社会生活での人望とは、本人の周囲に自ずと人が集まると解釈できます。
人望を形づくる要素には、(1)包容力(その10で記述済)、(2)コミュニケーションの聞き上手、(3)部下バックアップ、(4)人間味でありましょう。(2)〜(4)について、その要旨を説明します。

(2)・・人の言葉によく耳を傾けることは、よりよい人間関係を築くために最も有効です。人々に公平に耳を傾ける姿勢は、何かを自分にしてくれるという信頼感をもたらします。人望のある人は、人の言うことに耳を傾けるのは人から何かを教わることを心得ているからです。

(3)・・仕事上、人のことを考え人が自分に協力してくれるようにしなければ、何かを仕遂げることは出来ません。人の気持ちを斟酌して人のために尽くしているという人間関係の積み重ねがあればこそ、人は真剣に対応します。自分勝手や自分の都合しか考えない人には人望が生まれません。知らず知らずの内に近寄っていき気がついたら“とりこ”になる。そうした魅力が人望です。

(4)・・人間的魅力の1つに、自分の弱みをさらけ出したり、失敗談を話すと、相手と自分の距離も縮まり人同士の気持が近くなります。人望を高めるには、人間味としての自分をある程度さらけ出すのも信頼感をもたらします。

リーダーとは、先頭に立って部下を率いていく人です。人を指導していく力量があり、統率していく才能を備える人です。メンバー1人ひとりの役割りやその仕事内容について理解がなくては人はついていきません。いざとなれば、リーダーが取って代わるだけの知識と経験があれば、リーダーシップにも説得力があり磐石になります。従ってリーダーは先頭を走るだけでなく、時々後方を振り返り、仕事が遅れぬよう原因も考え、進む障害を取り除く役目があります。

最後に組織運営には、スペシャリストとゼネラリストの異なる役割について言及します。
前者は自分の専門性に集中して仕事をこなす人、後者は組織運営に携わり、仕事の面だけでなく人の面についても指示し的確で神経が行き届く人です。後者の役割りは誰にでも務まりそうですが、マネジメントの要素を見落とした意見です。組織全体を束ねて動かすということは、正に言う易く行なうは難しで、森だけでなく個々の樹木にも目をやりながら、運営する能力が必須です。

村井 徹


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時事問題(10)現代男女論 2007年08月10日 09:50

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—面喰いと異性観の変遷—

明治時代以来の修身教科書には「美人だからといって驕ってはいけない。不美人だからといって落胆することはない。」という文言が度々見かけます。女の容姿は強弱の程度差があるものの、お馴染みのテーマです。1974年、鈴木健二著『女らしさ愛らしさ』という人生論があり、いろいろな言いまわしを活用して不美人を励ましました。今なおこの種の人生論は書き続けられています。その中で著者が男であれ女であれ、共通する言葉に“面喰いは愚かだ”と詰っています。面喰いとは異性に対する好みが、容姿に左右されすぎる人をさす言葉です。一方、心理学者秋山さと子は女の魅力に容姿の美しさを積極的に評価し、女性自身の成長のために必要と語り、評論家樋口恵子は美人であることに溺れず自立する女性を指向。小池真理子も顔の素晴らしさを強調し、自信をもてと励ましています。
このように現代の傾向は、美人の拡散化であり、定義をあいまいにして、すべての女性を美しいと言いくるめようとする一種の平等主義があります。従って面喰いの男と現代の女性論とは互に相容れないようです。その矛盾を埋合わせるものとして、面喰いでない男、女に美を発見できる男が“ちゃんとした頭のある男”だと評価される考えが台頭しました。その代表例が評論家亀井勝一郎や作家高見順で恋愛の重要性を強調し、恋愛の対象となれば、女はみんな美しく見えると主張しました。一方、男の容姿を論じるのは僅かしかなく、平等観は男にまで普及しません。一般的に美男子には手厳しく、醜男には甘い論評です。しかし男についても美形罪悪は崩れ始めて、美男子を肯定したり、称揚したりする風潮もあります。
この美の平等化と美容産業やファッション業界との関連を見ると、これら産業はできるだけ多くの女性に美人になるために、努めさせなければマーケットの拡大はありえないわけです。そのため色白の美人だけでなく、色黒の女性にも小麦色に輝く美人を演出します。つまり美人の定義が広がるほど業界の成長につながる論法です。経済とは見えざる経済メカニズムが作動し、人生論もその方向に動員されることもありえましょう。
鎖国政策が解除後、西洋人が日本を訪れて、当時の文献を読むと、彼らが日本人の無表情さに驚き言及しています。日本ではオーバーな表情を下品と考える風習が定着していましたが、西洋人との交流により、古風な観念を弱めました。“表情”という言葉は明治末期の新語で、豊かな表情を肯定する考えが強まりました。また同時期に“知性美”という言葉も生まれ、知的に見える容姿を美しいとほめる際をいい、表情が内的な美しさ、力強い美しさだとされました。これらは能面のような動きのない顔を上品だとする儒教的な伝統は衰退し、豊かな表情をよろこぶ西洋の風俗に同化したわけです。
現代の美人論の建前は豊かな表情、知性、教養、健康や勤労精神も含めて容姿の美しさにつながっています。このことは先天的な美貌は軽視され、後天的な修養の努力こそ尊ぶという民主主義的な言語環境が形成されました。
現代の建前には、①美人だとか不美人だなどという問題を論じさせないような方向、②すべての女を美人とする発言だけを許容する方向があります。知性や内面が美人の条件という話は②の文脈です。
男女共、本心を言えば両者は面喰いでしょう。何故なら誰れでも容姿にひかれる部分があるからです。異性の容姿を重視する度合いは今でも男の方が強いものの、女が解放的になり、両者の面喰い度も互角になりましょう。美人でも、男前でもそれを鼻にかけると嫌味になります。身を守るには謙虚でおだやかな振舞いが必要でしょう。
また性格美人や仕事美人という言いまわしがありますが、こういう表現での美人は美形を意味せず、性格の好ましい女、仕事ができる女という程度で美人は女の同義語です。
某大学が数年前に調査した資料によれば、結婚にあたって重視する項目順位は、男が女に対して性格、愛情、健康、容姿、頭のよさであり、女が男に対して性格、愛情、健康、頭のよさ、収入で上位3位まで両者共通という注目すべきデータでした。

最後に、私がデビュー以来親しんだ草柳大蔵の晩年作『花のある人 花になる人』(2001年グラフ社)を紹介します。当人は政治、経済、社会の評論をはじめ、芸術論、人物論や女性論など多彩に活躍した人で大宅壮一の愛弟子でした。その著作に、女性のものの理解の仕方、言葉づかいや笑いなどに単純化が目立つと指摘しています。すなわち言語や表現などの行動面に豊かさが失われたことです。表題の花のある人とは、その人が加わるだけで周囲が和やかに明るくなる人をいい、花のない人とは才能があったり、名声があっても、その人が加わるだけで雰囲気が暗くなることを言います。このことは実生活に関係がなくとも、説明しきれないもの、それに耳を傾け心で感じようとすることが心の豊かさに通じると主張しています。

村井 徹

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