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―中央と地方の共生を求めて―
当コラムNo.13(2008年2月)にて格差社会を個人所得の視点から記述しましたが、平成に入って地域間でも格差が広がっています。例えば東京23区の殆んどの区は、中学校卒業までの医療費を無料化する一方、2007年に財政破綻した夕張市では住民サービスの質を全国最低水準まで下げて、多額の負債返済に四苦八苦しています。一般には財政状況が厳しい自治体では、高齢者向けの福祉サービスの個人負担額が増えているのが現実です。このように地域社会の崩壊は人心の崩壊、ひいては国全体の崩壊を伴っています。
平成の大合併により、約3,300あった市町村は半分近くに減少しましたが、その理由は国が元利償還金の7割を交付税として措置した合併特例債を活用したからです。2010年の国勢調査によると、ほんの一握りの人口増加自治体と大多数の人口減少自治体という二極化が進行して、財政力などで豊かな自治体と貧しい自治体が顕著になっています。前者は大都市やその周辺に限られ、後者は地方の農山漁村です。一方、雇用環境は中京圏の地方自治体では軒並み勝ち組となり、青森県や沖縄県などは負け組みです。しかし雇用環境で勝ち組であった中京圏の多くは、いわゆる3K(汚い、きつい、危険)を外国人労働者に依存して、外国人住民の割合は他の自治体よりも高く行政サービスの負担増です。このように相互に複雑な要因が入り組んで地域間問題は深刻化しています。
1990年代中頃までは、地域間格差があっても比較的均質な社会で許容範囲内であったものの、21世紀に入ってグローバル化の進展と規制緩和により、その許容限度を超えています。中央と地方、勝ち組と負け組みの自治体は対立するのか、あるいは共生するかは意見が分かれます。日本の人口は既に減力化し、大規模災害の危険性が指摘される昨今、地域間で助け合う、共助が必要であると共に、中央と地方が相互補完の関係を築くことも必要です。
最初に取り上げるのは「道州制」の問題です。道州制とは、明治以来130年近く続いた都道府県を廃止・統合して道や州に再編する構想です。地方制度調査会で検討され、前述の市町村合併に次いでの改革です。戦前の国の出先機関化していた都道府県は戦後に自治体化し、1957年以降、道州制が提言されてきましたが、法制化に至りません。この構想は国と地方のあり方を見直し、行政の効率性とコスト削減を求める広域自治体改革です。具体的には現在都道府県が実施している事務を大幅に市町村に移譲し、道州は広域事務を担う役割と国の出先機関が実施している事務を道州に移譲するものです。
政府の懇談会中間報告によれば、2011年に道州基本法を国会に提出し、2018年までに完全移行を目論んで、今後区割り(10ブロック前後の広域自治体)に議論が移ります。グローバル化が進展する中で、国際社会で自立した国家の役割は、外交、安全保障や生活保障などに注力し、内政事項は基本的に自主立法権をもつ道州と福祉などを基礎自治体に任せて、分権型社会を目指す狙いがあります。しかしこの実現に向けての課題もあります。何よりも国民的な議論が行われる仕掛けが必要ですが、地方の新聞社、放送局、銀行や各種団体がすべて都道府県を単位として組織化、運営されている現状では、それらの再編等に種々な影響を及ぼします。さらに日本の地方議会は国会議員制度を参考に地方議員制度が構築されました。英国のように執行権もなく、中途半端な位置付けです。また人口当たりの議員数も多く、処遇も高い有様です。英国が議会開催時の出席手当しか支給しないため、その報酬は日本の半分以下に対して、日本は定例会議を年4回開催し、2・4週間続き、地方議員は自営業、農業、建設業などの職種に偏っています。マスコミで話題になっている政務調査費の使い道も透明性に欠けています。
次に取り上げるのは「地方交付税」です。この原資は国税のうち、所得税の32%、酒税の32%、法人税の35.8%、消費税の29.5%、たばこ税の25%で合計2006年度16兆円を地方交付税として各自治体に配分され、各自治体の歳入の20%を占める重要な財源です。税財源が脆弱な市町村では大きな歳入ですが、小泉内閣の三位一体の改革で削減が続き、総額抑制だけが話題になり、地方の自助努力による行政改革を阻害している側面もあります。この議論は、削減したい財務省と守りたい総務省の対立だけではなく、中央と地方の財源争いでもあります。交付税や補助金は、既得権の問題ではなく、基本は全ての地域や住民に憲法が保障する最低限のサービスです。
現代の日本は、情報を中心とする諸機能が中央である東京に集中している偏りもあります。日本人はお上頼り、行政頼りの傾向が強く、既に限界に達しています。今やNPOやボランティア団体が世界的に注目を集めています。環境、福祉や街づくりの分野で行政を補完し、地域活性化に寄与する団体が全国各地で誕生しています。また企業の社会的責任や地域貢献も益々重要になっています。これらも地域活性化につながります。
バブル崩壊後もインフラ整備を進めるために、公共事業へ多額の税金が投入されました。確かに道路が整備されれば、雇用も増大し地域経済にもうるおいがあるものの、そのツケは多額の借金残高として後世に重くのしかかります。公共事業依存だけでは地域経済にプラスになりません。環境や国土保全に注力する方が地域の魅力を増します。
日本は古い歴史をもちながら、北海道から九州・沖縄まで大した変り映えのしない町づくり、町並みになっています。全国各地の駅前に乱立した○○銀座通り商店街(さびれてシャッター通り)があり、その土地柄の歴史、文化を主張していません。どの街も実用一点張りの規格品の建築物が全国津々浦々に同じ街並みをつくって、個性もなく奥行きのない経済原則に支配されています。
旧西独の敗戦後の都市づくりは、計画的に全国18都市毎に特色ある文化と景観をもち、独特な地域社会を形成しています。
地方が地域の個性を生かし、そこに暮らす人々が生きがいを見出せるような地域社会づくりが必要でしょう。中央が生みだす財源が地方を再生し、地方の再生が中央の生活を支える―経済的には中央ほど物質的・利便性では豊かでなくとも、地方に住む人々がその町に愛着と誇りをもって心の豊かさを実感できることが求められているのではないでしょうか。
村井 徹
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